解決事例
当事務所でサポートさせていただいた相続税申告の事例をご紹介します。土地の評価見直しによる節税、小規模宅地等の特例の活用、二次相続を見据えた遺産分割、名義預金の調査など、さまざまなケースに対応してきました。
※守秘義務の関係上、ご相談内容や数字は一部変更しています。

事例1:土地の評価見直しで相続税が約800万円減額

ご相談内容
世田谷区内に複数の土地を所有されていた方の相続です。相続人は配偶者とお子様2人の計3人で、遺産総額は約2億5,000万円。当初、他の税理士事務所で試算したところ、相続税額は約3,500万円と言われていました。
土地が5筆あり、「本当にこの評価額で正しいのか」という疑問をお持ちで、セカンドオピニオンとしてご相談に来られました。前の税理士事務所では現地調査を行っておらず、路線価に面積を掛けただけの「机上評価」で算出されていたことが不安の原因でした。
当事務所の対応
5筆すべての土地について現地調査を実施しました。専門機器による測量と、区役所・法務局での詳細な調査を行い、以下のような減額要素を発見しました。
1筆目は道路に面した間口に対して奥行きが極端に長く、かつ形状がいびつな土地でした。不整形地補正に加え、敷地の一部にがけ地が含まれており、がけ地補正も適用可能と判明しました。
2筆目は面積が500㎡を超える広い土地で、「地積規模の大きな宅地」に該当しました。この制度は、広すぎて一般の住宅用地としては使いにくい土地について、規模格差補正率を適用して評価額を下げるものです。適用により、大幅な減額が実現しました。
3筆目は隣地との間に約2メートルの高低差がありました。現地に行かなければわからない要素であり、「利用価値が著しく低下している宅地」として10%の減額を適用しました。
残り2筆についても、セットバック(建物の建て替え時に道路に提供しなければならない部分)や、都市計画道路の予定地に該当する部分を発見し、それぞれ減額を適用しました。
結果
土地の評価額を適正に見直した結果、相続税額は約2,700万円に。約800万円の減額となりました。当初の税理士事務所では現地調査を行っておらず、机上評価のみで算出されていたため、減額要素が見落とされていました。現地に足を運ぶことの重要性を改めて実感する事例です。

事例2:小規模宅地等の特例で自宅の評価が80%減
ご相談内容
お父様が亡くなり、お子様が自宅に住み続けるケースです。世田谷区内の自宅は土地面積約250㎡で、路線価に基づく評価額は約8,000万円。預貯金を合わせた遺産総額は約9,500万円で、相続人は配偶者のいないお子様1人のみでした。
基礎控除額3,600万円を大きく超えており、数百万円の相続税が見込まれていました。「自宅を売却しないと税金が払えないかもしれない」と心配されてのご相談でした。長年住み慣れた家を手放したくないというお気持ちは切実なものでした。
当事務所の対応
小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適用要件を詳細に確認しました。お子様はお父様と同居されており、相続後も引き続き居住・所有を継続される予定であることから、特例の適用要件を満たすと判断しました。
この特例により、330㎡までの部分について土地の評価額を80%減額できます。自宅の土地面積250㎡は330㎡以内のため、全面積に対して80%減額が適用可能です。
加えて、現地調査を実施したところ、建物の建て替え時にセットバック部分があることも判明しました。セットバック部分は将来道路として提供しなければならないため、その分の評価減も適用しました。
結果
自宅の土地評価額8,000万円が1,600万円に減額。セットバック部分の減額も加わり、遺産総額が基礎控除額以下になりました。これにより家族全体の相続税は0円となりました。自宅を売却する必要もなくなり、お客様は安心して住み続けることができています。
なお、この特例は申告書の提出が要件のため、税額が0円であっても期限内の申告が必要です。「税金がゼロなら申告しなくていい」と誤解されている方も多いため、注意が必要なポイントです。

事例3:申告期限まで2ヶ月——駆け込みでも期限内に完了
ご相談内容
相続発生から8ヶ月が経過し、申告期限まで残り2ヶ月。遺産は自宅の土地・建物と預貯金で、総額は約1億2,000万円。相続人は配偶者と子1人でした。
当初は別の税理士事務所に依頼しようとしたものの、期限が近いことを理由に断られ、さらに別の事務所にも「この期間では受けられない」と言われ、3件目のご相談として当事務所にお越しになりました。「もう間に合わないのではないか」と非常に焦っていらっしゃいました。
当事務所の対応
ご相談を受けた翌日に面談を実施し、必要資料のリストをお渡ししました。通常であれば資料収集→評価→分割協議→申告書作成と順番に進めますが、2ヶ月という限られた期間のため、資料収集と並行して財産の評価を進めるスケジュールを組みました。
週1回の進捗確認を行い、お客様と密に連絡を取りながらスケジュールを厳密に管理。届いた資料から順に評価を進め、次に必要な資料を随時ご案内するという形で、通常5〜6ヶ月かかる工程を2ヶ月に凝縮しました。
遺産分割協議については、配偶者の税額軽減と二次相続を考慮した分割案を迅速にご提案し、相続人間の合意形成もサポートしました。土地の現地調査も漏れなく実施しています。
結果
申告期限の1週間前に申告書を完成させ、無事に期限内申告を達成しました。延滞税や無申告加算税を回避できました。
期限内に申告できたことで、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減も問題なく適用でき、税額も最小限に抑えることができました。期限を過ぎてしまうとこれらの特例が適用できなくなるリスクもあったため、期限内に間に合ったことの意味は非常に大きかったと言えます。

事例4:二次相続シミュレーションで将来の税負担を約500万円軽減
ご相談内容
お父様の相続(一次相続)で、お母様(75歳)と子ども2人が相続人。遺産総額は約1億8,000万円(自宅の土地・建物、預貯金、有価証券)でした。
知人から「配偶者の税額軽減を最大限使えば相続税が0円になる」と聞いていましたが、インターネットで調べるうちに「二次相続で損をすることがある」という情報を目にし、本当にそれが得なのか疑問をお持ちでした。一次相続だけでなく、将来のことも考えた判断をしたいとのご希望でした。
当事務所の対応
一次相続だけでなく、将来のお母様の相続(二次相続)も含めたシミュレーションを実施しました。配偶者の取得割合を法定相続分(1/2)、100%、40%、30%の4パターンで、一次・二次の合計税額を比較しました。
シミュレーションにあたっては、お母様の年齢や健康状態、お母様自身の固有財産(約2,000万円)、将来の生活資金の見通し、自宅の居住状況なども考慮しました。さらに、二次相続時の小規模宅地等の特例の適用可否も含めて検討しました。
具体的な税額の比較表を作成し、各パターンのメリット・デメリットをわかりやすくご説明しました。数字を見ながらご家族で話し合っていただくことで、納得感のある判断をしていただけるよう努めました。
結果
分析の結果、配偶者が遺産の約40%を取得する分割案が最適と判明しました。配偶者の税額軽減を「使いすぎない」ことで、一次相続では約180万円の税額が発生しましたが、二次相続での税額は配偶者100%取得の場合と比較して約680万円減少。一次・二次相続を合わせたトータルでは約500万円の節税につながりました。
お母様の生活資金も十分確保しつつ、お子様の将来の負担を最小限にするバランスの取れた分割を実現できました。

事例5:名義預金の事前調査で税務調査を回避
ご相談内容
お母様が亡くなり、相続人はお子様2人。お母様は長年にわたりお子様名義の口座に毎年110万円ずつ入金されていましたが、通帳の管理はお母様ご自身がされていました。「これは名義預金に当たるのか」「税務調査で指摘されたらどうしよう」と不安を抱えてご相談に来られました。
名義預金とは、口座の名義は配偶者やお子様であっても、実質的には亡くなった方の財産とみなされる預金のことです。贈与が成立しているかどうかは、贈与契約書の有無、通帳や印鑑の管理状況、口座の使用実態など、複数の要素から総合的に判断されます。
当事務所の対応
過去15年分の預金移動を徹底調査しました。お母様の口座からお子様名義の口座への資金移動を時系列で整理し、贈与契約書の有無、通帳・印鑑の管理状況、口座の使用実態などを総合的に検証しました。
調査の結果、一部の口座については贈与契約書が作成されており、受贈者であるお子様自身が通帳・印鑑を管理し、口座からの出金も行っていたことが確認できました。これらは贈与として認められると判断しました。
一方、別の口座については贈与契約書がなく、お母様が通帳を保管し続けており、お子様は口座の存在すら知らなかったケースもありました。これらは名義預金に該当すると判断し、相続財産に含めることにしました。
名義預金に該当するものと贈与として認められるものを明確に区分し、その根拠を書面添付に詳細に記載しました。
結果
名義預金として約1,200万円を相続財産に加算して適正に申告。一方、贈与契約書があり受贈者が管理していた約800万円は贈与財産として除外できました。書面添付の効果もあり、税務調査は行われず申告完了。事前の調査がなければ、税務調査で全額が名義預金と認定され、過少申告加算税が課されるリスクがありました。

事例6:相続人が多く遺産分割が難航——税務シミュレーションで円満解決
ご相談内容
お父様の相続で、相続人は配偶者と子ども4人の計5人。遺産は自宅の土地・建物、賃貸アパート、預貯金、有価証券など多岐にわたり、総額は約2億円でした。
兄弟間で「誰がどの財産を取得するか」についての意見が分かれ、数ヶ月にわたり協議が進んでいませんでした。長男は「自宅は自分が継ぐべき」、次男は「不動産を売却して公平に分けるべき」と主張し、感情的な対立も生じていました。
当事務所の対応
まず全財産の適正な評価を行い、財産一覧表を作成しました。そのうえで、6パターンの遺産分割案を作成し、それぞれの案における各相続人の取得額と相続税額をシミュレーションしました。
小規模宅地等の特例の適用パターンも複数検討し、配偶者の税額軽減と組み合わせた最適な分割方法をご提案。二次相続も含めたトータルの税負担比較表をお渡ししました。
「この分け方なら一次相続の税金はいくら」「この分け方なら二次相続も含めてトータルいくら」という具体的な数字を示すことで、感情論ではなく合理的な話し合いの土台を作りました。
結果
数字に基づく客観的な資料を見ることで、兄弟間の話し合いが進展。最終的に全員が納得する分割案で合意に至り、一次・二次相続を通じた税負担を約600万円軽減する結果となりました。遺産分割協議書の作成までサポートし、申告期限内に無事完了しました。

事例7:遠方の不動産を含む複雑な相続——現地調査で大幅節税
ご相談内容
亡くなったお父様が世田谷区内の自宅のほか、神奈川県と千葉県にも土地を所有されていました。相続人は配偶者と子ども1人。不動産が複数の自治体にまたがっており、評価が複雑になることが予想されました。
他の税理士事務所に相談したところ、「遠方の土地は現地調査なしで机上評価する」と言われ、不安を感じてご相談に来られました。「すべての土地をきちんと評価してほしい」というご要望でした。
当事務所の対応
世田谷区の自宅はもちろん、神奈川県・千葉県の土地もすべて現地調査を実施しました。専門機器による測量と、各自治体の役所での道路・都市計画情報の調査を行いました。
その結果、神奈川の土地は不整形地であることに加え、高圧線が上空を通過していることが判明。高圧線下の土地は建築制限を受けるため、評価額の減額が認められます。これは現地に行かなければ発見できない要素でした。
千葉の土地は建築基準法上の道路に接していない「無道路地」であることが判明しました。無道路地は通路部分の価額を控除して評価するため、大幅な減額が可能です。机上評価では接道状況まで正確に判断することが難しく、現地調査によって初めて発見された減額要素です。
結果
3つの土地すべてで評価額の減額に成功。当初の机上評価と比較して、土地の評価額は合計で約4,000万円減額。これにより相続税は約1,200万円の節税となりました。現地調査を行わなければ発見できなかった減額要素が多く、お客様からは「すべての土地を見に行ってもらえて本当によかった」との声をいただきました。

事例8:生前贈与の全容を解明し適正申告を実現
ご相談内容
お父様が亡くなり、相続人は配偶者と子ども3人。お父様は生前に孫やお子様に対して複数回の贈与を行っていたようですが、ご家族は贈与の正確な金額や時期を把握していませんでした。
「贈与税の申告をしたものもあれば、していないものもあるかもしれない」とのことで、相続税申告に与える影響がわからず不安を感じていらっしゃいました。特に、相続時精算課税制度を利用した贈与があったかどうかがはっきりしない点が大きな懸念でした。
当事務所の対応
まず、お父様の過去15年分の預金移動調査を実施し、贈与と思われる資金移動をすべて洗い出しました。次に、税務署への贈与税申告内容の開示請求を代行し、過去に申告された贈与の内容を確認しました。
その結果、相続時精算課税制度を利用した贈与が2件、暦年贈与が複数件あることが判明しました。相続時精算課税の贈与は全額が相続財産に加算されるため、漏れなく申告に反映する必要があります。暦年贈与についても、亡くなる前7年以内のものは相続財産に加算する必要があります。
それぞれの加算対象の該当・非該当を精査し、正確な相続財産額を算出しました。加算対象外の贈与を誤って含めてしまうと相続税が過大になるため、慎重な判断が求められました。
結果
相続時精算課税の贈与分2,500万円を相続財産に加算し、暦年贈与のうち加算対象となる分も漏れなく申告。一方、加算対象外の贈与を誤って含めることなく、適正な申告を実現しました。書面添付に贈与の調査経緯を詳細に記載したことで、税務調査なく申告が完了。「自分たちだけでは絶対にできなかった」とのお言葉をいただきました。

事例9:配偶者居住権を活用し、自宅に住み続けながら節税を実現
ご相談内容
お父様が亡くなり、相続人はお母様(80歳)と前妻のお子様1人の計2人。遺産は世田谷区内の自宅(土地・建物の評価額約6,000万円)と預貯金約3,000万円の合計約9,000万円でした。
お母様は自宅に住み続けたいと強く希望されていましたが、前妻のお子様との関係はあまり良くなく、自宅をお母様が取得すると預貯金の取り分が少なくなり、今後の生活資金が不足する可能性がありました。「家に住み続けたいが、生活費も確保したい」というご要望でした。
当事務所の対応
2020年4月に施行された配偶者居住権の活用をご提案しました。配偶者居住権とは、自宅の所有権を取得しなくても、終身にわたり自宅に住み続けることができる権利です。
配偶者居住権を設定すると、自宅は「配偶者居住権」と「負担付き所有権」に分かれます。お母様が配偶者居住権を取得し、前妻のお子様が負担付き所有権を取得することで、お母様は自宅に住み続けながら、預貯金もより多く取得できるようになります。
配偶者居住権の評価額はお母様の年齢や建物の耐用年数によって計算されます。お母様が80歳と高齢であるため、配偶者居住権の評価額は比較的低くなり、その分、預貯金を多く取得できる計算になりました。
さらに、配偶者居住権はお母様が亡くなった時点で消滅するため、二次相続では課税対象になりません。これにより二次相続の税負担も軽減されます。
結果
お母様は配偶者居住権と預貯金約2,000万円を取得し、自宅に住み続けながら十分な生活資金も確保できました。前妻のお子様は負担付き所有権と残りの預貯金を取得。二次相続まで含めたトータルの税負担は、配偶者居住権を活用しなかった場合と比較して約350万円の軽減となりました。双方が納得する円満な分割を実現できた事例です。

事例10:海外資産を含む相続——国外財産調書との整合性を確保
ご相談内容
お父様が亡くなり、相続人は配偶者と子ども2人の計3人。お父様は日本国内の不動産や預貯金のほか、アメリカの銀行口座に約2,000万円相当の預金、ハワイにコンドミニアム(評価額約3,500万円)を所有されていました。遺産総額は約2億円でした。
海外に資産がある場合の相続税申告の方法がわからず、また「国外財産調書」の提出義務についても不安をお持ちでした。
当事務所の対応
海外資産については、まず現地の金融機関から英文の残高証明書を取得し、相続開始日のレートで円換算しました。ハワイのコンドミニアムについては、現地の不動産鑑定評価を参考にしつつ、日本の相続税法に基づく評価方法で適正な評価額を算出しました。
また、お父様が生前に提出されていた国外財産調書の内容と、相続税申告書に記載する海外資産の内容に齟齬がないよう、整合性の確認を徹底しました。国外財産調書と相続税申告書の間に矛盾があると、税務署からの問い合わせや調査のきっかけになる可能性があります。
さらに、アメリカにも相続税(遺産税)に相当する制度がありますが、日米租税条約に基づく二重課税の排除措置についても検討し、外国税額控除の適用可否を確認しました。
結果
海外資産を含む全財産を適正に評価し、国外財産調書との整合性も確保した正確な申告を実現しました。書面添付に海外資産の評価方法と根拠を詳細に記載したことで、税務調査なく申告が完了。海外資産を含む相続は年々増加しており、専門的な知識が求められる分野です。

事例11:賃貸アパートの相続——小規模宅地等の特例(貸付事業用)で評価減
ご相談内容
お父様が亡くなり、相続人は配偶者と子ども1人。遺産は自宅の土地・建物のほか、世田谷区内に賃貸アパート2棟(敷地面積合計約400㎡)と預貯金があり、総額は約1億5,000万円でした。
賃貸アパートの土地評価をどのように行うか、また小規模宅地等の特例が自宅と賃貸アパートの両方に使えるのかがわからないとのことでした。
当事務所の対応
賃貸アパートの敷地については、まず「貸家建付地」としての評価減を適用しました。貸家建付地とは、所有する土地の上に賃貸用の建物を建てて他人に貸している場合に、更地の評価額から一定の減額が認められるものです。借地権割合と借家権割合、賃貸割合に基づいて計算します。
次に、小規模宅地等の特例の適用を検討しました。自宅の土地には「特定居住用宅地等」として最大330㎡まで80%減額、賃貸アパートの土地には「貸付事業用宅地等」として最大200㎡まで50%減額が適用できます。ただし、両方を併用する場合は面積の調整計算が必要になります。
自宅を優先して特例を適用した場合と、賃貸アパートを優先した場合、さらには両方を組み合わせた場合の3パターンで税額を比較し、最も税額が低くなるパターンをご提案しました。
また、賃貸アパートの現地調査も実施し、建物の老朽化に伴う評価減や、敷地の形状に基づく補正も適用しました。
結果
貸家建付地評価と小規模宅地等の特例の最適な組み合わせにより、相続税額を約400万円軽減しました。賃貸アパートを含む相続では、特例の適用順序によって税額が大きく変わるため、複数パターンのシミュレーションが欠かせません。

事例12:老人ホーム入居中の相続——小規模宅地等の特例の適用判断
ご相談内容
お母様が亡くなり、相続人は子ども2人。お母様は亡くなる3年前から有料老人ホームに入居されており、自宅は空き家の状態でした。自宅の土地評価額は約5,000万円、預貯金は約4,000万円、遺産総額は約9,000万円でした。
お子様は「母が老人ホームに入居していたので、もう自宅には小規模宅地等の特例は使えないのではないか」と心配されていました。自宅が空き家だった場合でも特例が使えるのか、判断が難しい状況でした。
当事務所の対応
小規模宅地等の特例は、被相続人が老人ホームに入居していた場合でも、一定の要件を満たせば適用可能です。具体的には、要介護認定または要支援認定を受けていたこと、老人福祉法に規定する施設に入居していたこと、入居後に自宅を賃貸に出していないことなどが要件となります。
お母様の介護認定の状況、入居していた施設の種類、自宅の利用状況などを詳細に確認しました。その結果、お母様は要介護3の認定を受けており、入居先は有料老人ホーム(老人福祉法に規定する施設に該当)であること、入居後も自宅は賃貸に出さず空き家のままであったことが確認できました。
さらに、お子様のうち1人が「家なき子特例」の要件を満たすかどうかも検討しました。家なき子特例とは、被相続人に配偶者がおらず、同居の相続人もいない場合に、一定の要件を満たす別居の親族が自宅の土地について小規模宅地等の特例を適用できる制度です。
結果
お子様の1人が家なき子特例の要件を満たしていたため、小規模宅地等の特例を適用し、自宅の土地評価額5,000万円を80%減額の1,000万円に圧縮。遺産総額が大幅に下がり、相続税額は当初の見込みより約700万円の減額となりました。老人ホーム入居中の相続では特例の適用可否の判断が複雑ですが、要件を丁寧に確認することで適用が認められるケースは少なくありません。

事例13:相続税の申告後に遺産が見つかった——修正申告で適正に対応
ご相談内容
当事務所で相続税申告を完了した後、お客様から「父の遺品を整理していたら、知らなかった証券会社の口座が見つかった」とのご連絡がありました。証券口座には上場株式約500万円分が残っていました。
申告漏れの財産が見つかった場合、修正申告が必要になります。「税務署に指摘される前に自分から申告したほうがいいのか」「追徴税はどれくらいかかるのか」と不安を感じていらっしゃいました。
当事務所の対応
税務署から指摘を受ける前に自主的に修正申告を行えば、過少申告加算税は原則として課されません(ただし延滞税は発生します)。一方、税務署から指摘を受けた後の修正申告では、追加の税額に対して10%(50万円超の部分は15%)の過少申告加算税が課されます。
この違いをお客様にご説明し、速やかに修正申告を行うことをおすすめしました。新たに見つかった株式の評価額を相続開始日の時価で算出し、修正申告書を作成しました。
結果
税務署の指摘前に自主的に修正申告を行ったため、過少申告加算税は課されず、追加の相続税と延滞税のみの負担で済みました。申告後に遺産が見つかることは決して珍しくありません。重要なのは、発見した時点で速やかに対応することです。

事例14:広大な農地の相続——納税猶予制度を活用
ご相談内容
世田谷区内で代々農業を営んでいたお父様が亡くなり、相続人は配偶者と子ども2人。遺産の大部分は農地(生産緑地含む)で、面積は合計約2,000㎡。農地の評価額は約3億円、その他の財産を含めた遺産総額は約3億5,000万円でした。
長男が農業を引き継ぐ予定でしたが、農地の評価額が非常に高く、そのまま課税されると数千万円の相続税が発生し、農地を売却しなければ納税できない状況でした。「農業を続けたいのに、税金のために農地を手放さなければならないのか」と悩まれてのご相談でした。
当事務所の対応
農地の相続には「農地の納税猶予制度」という特別な制度があります。農業を営んでいた被相続人から農地を相続した相続人が、引き続き農業を営む場合に、農地にかかる相続税の一部について納税が猶予される制度です。猶予された税額は、相続人が農業を継続している限り、最終的に免除されます。
この制度の適用には、被相続人が農業を営んでいたこと、相続人が農業を継続すること、農業委員会の証明を受けることなど、複数の要件を満たす必要があります。当事務所では、各要件の充足状況を確認し、農業委員会への手続きもサポートしました。
また、生産緑地については生産緑地法に基づく評価減も適用しました。生産緑地は建築制限を受けるため、宅地としての評価額から一定の減額が認められます。
結果
農地の納税猶予制度を適用した結果、約2,500万円の相続税が猶予されました。長男が農業を続ける限り、この税額は最終的に免除されます。農地を売却することなく農業を継続できることになり、お客様に大変喜んでいただきました。都市部の農地相続は評価額が高額になりやすいため、納税猶予制度の活用が重要です。

事例15:相続放棄を検討——債務超過の可能性がある相続への対応
ご相談内容
お父様が亡くなり、相続人は子ども1人。お父様は生前に事業を営んでおり、預貯金や自宅のほか、事業に関連する借入金が残っている可能性がありました。「プラスの財産とマイナスの財産(借金)のどちらが多いかわからない」「相続放棄したほうがいいのか判断がつかない」とのご相談でした。
相続放棄の期限は、相続の開始を知った日から3ヶ月以内です。この期限を過ぎると原則として放棄できなくなるため、迅速な財産調査が求められました。
当事務所の対応
まず、プラスの財産(不動産、預貯金、有価証券、生命保険金など)とマイナスの財産(借入金、未払い税金、連帯保証債務など)を緊急に調査しました。金融機関への照会、信用情報機関への開示請求、法務局での登記確認などを並行して進めました。
調査の結果、事業に関連する借入金は約1,500万円でしたが、不動産や預貯金などのプラスの財産は合計約4,000万円あり、差し引きで約2,500万円のプラスであることが判明しました。債務超過ではないため、相続放棄ではなく通常の相続手続きを進めることをおすすめしました。
なお、お父様が個人事業主であったため、事業に関連する準確定申告(亡くなった年の所得税申告)も併せて行いました。相続税申告の期限は10ヶ月ですが、準確定申告の期限は4ヶ月と短いため、こちらを優先してスケジュールを組みました。
結果
迅速な財産調査により、相続放棄の期限内に「放棄は不要」という判断ができました。その後、通常の相続税申告手続きを進め、借入金を債務控除として差し引いたうえで適正に申告。相続財産に含まれない生命保険金の非課税枠も活用し、税負担を抑えることができました。相続の開始直後に財産の全体像を把握することの重要性を示す事例です。
相続税申告のご相談は、お気軽にどうぞ
上記の事例はほんの一部です。相続の状況はご家族ごとに異なります。「自分のケースはどうなるのだろう」「このくらいの遺産でも相談していいのだろうか」——そのような段階でも、お気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。
