相続税申告サービスの解決事例
当事務所でサポートさせていただいた相続税申告の事例をご紹介します。土地の評価見直しによる節税、小規模宅地等の特例の活用、二次相続を見据えた遺産分割、名義預金の調査など、さまざまなケースに対応してきました。
※守秘義務の関係上、ご相談内容や数字は一部変更しています。

事例1:土地の評価見直しで相続税が約800万円減額

ご相談者の属性
50代男性(長男)。相続人は配偶者とお子様2人の計3名。被相続人は世田谷区在住の80代男性。遺産総額は約2億5,000万円。主な財産は世田谷区内の土地5筆と預貯金です。
ご相談の背景・お悩み
世田谷区内に複数の土地を所有されていた方の相続です。当初、他の税理士事務所で試算したところ、相続税額は約3,500万円と言われていました。
土地が5筆あり、「本当にこの評価額で正しいのか」という疑問をお持ちで、セカンドオピニオンとしてご相談に来られました。前の税理士事務所では現地調査を行っておらず、路線価に面積を掛けただけの「机上評価」で算出されていたことが不安の原因でした。ご相談者のお話では、土地の中にはがけのような高低差がある場所や、形がいびつな場所もあるとのことで、「それでも同じ評価になるのか」と疑問を感じていたそうです。
当事務所の対応・提案内容
5筆すべての土地について現地調査を実施しました。区役所・法務局での詳細な調査もあわせて行い、以下のような減額要素を発見しました。
1筆目は道路に面した間口に対して奥行きが極端に長く、かつ形状がいびつな土地でした。不整形地補正に加え、敷地の一部にがけ地が含まれており、がけ地補正も適用可能と判明しました。
2筆目は面積が500㎡を超える広い土地で、「地積規模の大きな宅地」に該当しました。この制度は、広すぎて一般の住宅用地としては使いにくい土地について、規模格差補正率を適用して評価額を下げるものです。適用により、大幅な減額が実現しました。
3筆目は隣地との間に約2メートルの高低差がありました。現地に行かなければわからない要素であり、「利用価値が著しく低下している宅地」として10%の減額を適用しました。
残り2筆についても、セットバック(建物の建て替え時に道路に提供しなければならない部分)や、都市計画道路の予定地に該当する部分を発見し、それぞれ減額を適用しました。
結果・効果
土地の評価額を適正に見直した結果、相続税額は約2,700万円に。約800万円の減額となりました。当初の税理士事務所では現地調査を行っておらず、机上評価のみで算出されていたため、減額要素が見落とされていました。現地に足を運ぶことの重要性を改めて実感する事例です。
ポイント解説
土地の相続税評価は、路線価に面積を掛けるだけでは終わりません。形状・高低差・都市計画の制限など、現地に足を運ばなければ発見できない減額要素が多数あります。特に世田谷区のように地形の起伏がある地域では、がけ地補正や高低差による減額が適用できるケースが少なくありません。「地積規模の大きな宅地」の評価減は適用要件が細かく、見落とされやすい制度です。セカンドオピニオンとしてのご相談も随時お受けしています。

事例2:小規模宅地等の特例で自宅の評価が80%減
ご相談者の属性
40代男性(長男、一人っ子)。相続人はお子様1名のみ(配偶者なし)。被相続人は世田谷区在住の70代男性。遺産総額は約9,500万円。主な財産は自宅の土地・建物(土地面積約250㎡、路線価による評価額約8,000万円)と預貯金です。
ご相談の背景・お悩み
お父様が亡くなり、お子様が自宅に住み続けるケースです。基礎控除額3,600万円を大きく超えており、数百万円の相続税が見込まれていました。
「自宅を売却しないと税金が払えないかもしれない」と心配されてのご相談でした。長年住み慣れた家を手放したくないというお気持ちは切実なものでした。
当事務所の対応・提案内容
小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適用要件を詳細に確認しました。お子様はお父様と同居されており、相続後も引き続き居住・所有を継続される予定であることから、特例の適用要件を満たすと判断しました。
この特例により、330㎡までの部分について土地の評価額を80%減額できます。自宅の土地面積250㎡は330㎡以内のため、全面積に対して80%減額が適用可能です。
加えて、現地調査を実施したところ、建物の建て替え時にセットバック部分があることも判明しました。セットバック部分は将来道路として提供しなければならないため、その分の評価減も適用しました。
結果・効果
自宅の土地評価額8,000万円が1,600万円に減額。セットバック部分の減額も加わり、遺産総額が基礎控除額以下になりました。これにより家族全体の相続税は0円となりました。自宅を売却する必要もなくなり、お客様は安心して住み続けることができています。
ポイント解説
小規模宅地等の特例は、要件を満たせば土地の評価額を最大80%も減額できる非常に強力な制度です。ただし、税額が0円であっても期限内の申告が必要です。「税金がゼロなら申告しなくていい」と誤解されている方も多いですが、特例を適用するには必ず申告書を提出しなければなりません。申告しなかった場合、特例は適用されず、本来不要だったはずの相続税が発生してしまいます。

事例3:申告期限まで2ヶ月——駆け込みでも期限内に完了
ご相談者の属性
50代女性(配偶者)。相続人は配偶者と子1名の計2名。被相続人は60代男性。遺産総額は約1億2,000万円。主な財産は自宅の土地・建物と預貯金です。
ご相談の背景・お悩み
相続発生から8ヶ月が経過し、申告期限まで残り2ヶ月。遺産は自宅の土地・建物と預貯金で、総額は約1億2,000万円でした。
当初は別の税理士事務所に依頼しようとしたものの、期限が近いことを理由に断られ、さらに別の事務所にも「この期間では受けられない」と言われ、3件目のご相談として当事務所にお越しになりました。「もう間に合わないのではないか」と非常に焦っていらっしゃいました。
当事務所の対応・提案内容
ご相談を受けた翌日に面談を実施し、必要資料のリストをお渡ししました。通常であれば資料収集→評価→分割協議→申告書作成と順番に進めますが、2ヶ月という限られた期間のため、資料収集と並行して財産の評価を進めるスケジュールを組みました。
週1回の進捗確認を行い、お客様と密に連絡を取りながらスケジュールを厳密に管理。届いた資料から順に評価を進め、次に必要な資料を随時ご案内するという形で、通常5〜6ヶ月かかる工程を2ヶ月に凝縮しました。
遺産分割協議については、配偶者の税額軽減と二次相続を考慮した分割案を迅速にご提案し、相続人間の合意形成もサポートしました。土地の現地調査も漏れなく実施しています。
結果・効果
申告期限の1週間前に申告書を完成させ、無事に期限内申告を達成しました。延滞税や無申告加算税を回避できました。
期限内に申告できたことで、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減も問題なく適用でき、税額も最小限に抑えることができました。期限を過ぎてしまうとこれらの特例が適用できなくなるリスクもあったため、期限内に間に合ったことの意味は非常に大きかったと言えます。
ポイント解説
相続税の申告期限は被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。期限を過ぎてしまうと、延滞税や無申告加算税が発生するほか、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減が使えなくなるリスクがあります。「もう間に合わない」と思っても、まずはご相談いただくことをおすすめします。当事務所では、緊急案件にも柔軟に対応する体制を整えています。

事例4:二次相続シミュレーションで将来の税負担を約500万円軽減
ご相談者の属性
50代男性(長男)。相続人は配偶者(75歳)と子ども2名の計3名。被相続人は80代男性。遺産総額は約1億8,000万円。主な財産は自宅の土地・建物、預貯金、有価証券です。
ご相談の背景・お悩み
お父様の相続(一次相続)で、お母様(75歳)と子ども2人が相続人でした。知人から「配偶者の税額軽減を最大限使えば相続税が0円になる」と聞いていましたが、インターネットで調べるうちに「二次相続で損をすることがある」という情報を目にし、本当にそれが得なのか疑問をお持ちでした。
一次相続だけでなく、将来のお母様の相続(二次相続)も考えた判断をしたいとのご希望でした。
当事務所の対応・提案内容
一次相続だけでなく、将来のお母様の相続(二次相続)も含めたシミュレーションを複数パターン作成しました。
配偶者の取得割合を変えた複数のパターンを作成し、それぞれについて一次相続の税額と、将来の二次相続における推定税額を算出しました。お母様の固有財産、今後の生活費の見込みも加味したうえで、パターンごとの一次・二次合計税額を比較表にまとめました。
特に重要なのは、配偶者の税額軽減は一次相続では大きな節税効果がありますが、配偶者が多くの財産を取得すると、二次相続の課税価格が膨らむという点です。お母様の年齢と健康状態、自宅の将来の処分見通しなども考慮し、最適な取得割合をご提案しました。
結果・効果
分析の結果、配偶者が遺産の約40%を取得する分割案が最適と判明しました。配偶者の税額軽減を「使いすぎない」ことで、一次相続では約180万円の税額が発生しましたが、二次相続での税額は配偶者100%取得の場合と比較して約680万円減少。一次・二次相続を合わせたトータルでは約500万円の節税につながりました。
ポイント解説
配偶者の税額軽減は法定相続分または1億6,000万円のいずれか大きい額まで非課税となる非常に強力な制度です。しかし、一次相続で配偶者が多くの財産を取得すると、二次相続で子どもに重い税負担がかかる場合があります。「一次相続の税金を最小にする」ことが必ずしも正解ではなく、一次・二次をトータルで比較する視点が重要です。当事務所では、すべての案件で二次相続シミュレーションを実施しています。

事例5:名義預金の事前調査で税務調査を回避
ご相談者の属性
50代女性(長女)。相続人はお子様2名。被相続人は80代の母。遺産総額は約7,000万円。主な財産は預貯金で、お子様名義の口座が複数存在していました。
ご相談の背景・お悩み
お母様が亡くなり、相続人はお子様2人。お母様は長年にわたりお子様名義の口座に毎年110万円ずつ入金されていましたが、通帳の管理はお母様ご自身がされていました。「これは名義預金に当たるのか」「税務調査で指摘されたらどうしよう」と不安を抱えてご相談に来られました。
名義預金とは、口座の名義は配偶者やお子様であっても、実質的には亡くなった方の財産とみなされる預金のことです。贈与が成立しているかどうかは、贈与契約書の有無、通帳や印鑑の管理状況、口座の使用実態など、複数の要素から総合的に判断されます。
当事務所の対応・提案内容
過去15年分の預金移動を徹底調査しました。お母様の口座からお子様名義の口座への資金移動を時系列で整理し、贈与契約書の有無、通帳・印鑑の管理状況、口座の使用実態などを総合的に検証しました。
調査の結果、一部の口座については贈与契約書が作成されており、受贈者であるお子様自身が通帳・印鑑を管理し、口座からの出金も行っていたことが確認できました。これらは贈与として認められると判断しました。
一方、別の口座については贈与契約書がなく、お母様が通帳を保管し続けており、お子様は口座の存在すら知らなかったケースもありました。これらは名義預金に該当すると判断し、相続財産に含めることにしました。
名義預金に該当するものと贈与として認められるものを明確に区分し、その根拠を書面添付に詳細に記載しました。
結果・効果
名義預金として約1,200万円を相続財産に加算して適正に申告。一方、贈与契約書があり受贈者が管理していた約800万円は贈与財産として除外できました。書面添付の効果もあり、税務調査は行われず申告完了。事前の調査がなければ、税務調査で全額が名義預金と認定され、過少申告加算税が課されるリスクがありました。
ポイント解説
名義預金は税務調査で最も指摘されやすい論点の一つです。「名義が家族のものだから相続財産ではない」とは限りません。口座の管理者は誰か、届出印は誰が持っているか、贈与契約書はあるか、受贈者は口座の存在を知っていたか——これらを総合的に判断して名義預金かどうかが決まります。当事務所では、預金調査を追加費用なしの基本サービスとして実施し、書面添付制度を活用して申告の信頼性を高めています。

事例6:相続人が多く遺産分割が難航——税務シミュレーションで円満解決
ご相談者の属性
50代男性(長男)。相続人は配偶者と子ども4人の計5名。被相続人は80代男性。遺産総額は約2億円。主な財産は自宅の土地・建物、賃貸アパート、預貯金、有価証券など多岐にわたります。
ご相談の背景・お悩み
お父様の相続で、相続人は配偶者と子ども4人の計5人。遺産は自宅の土地・建物、賃貸アパート、預貯金、有価証券など多岐にわたり、総額は約2億円でした。
兄弟間で「誰がどの財産を取得するか」についての意見が分かれ、数ヶ月にわたり協議が進んでいませんでした。長男は「自宅は自分が継ぐべき」、次男は「不動産を売却して公平に分けるべき」と主張し、感情的な対立も生じていました。
当事務所の対応・提案内容
まず全財産の適正な評価を行い、財産一覧表を作成しました。そのうえで、6パターンの遺産分割案を作成し、それぞれの案における各相続人の取得額と相続税額をシミュレーションしました。
小規模宅地等の特例の適用パターンも複数検討し、配偶者の税額軽減と組み合わせた最適な分割方法をご提案。二次相続も含めたトータルの税負担比較表をお渡ししました。
「この分け方なら一次相続の税金はいくら」「この分け方なら二次相続も含めてトータルいくら」という具体的な数字を示すことで、感情論ではなく合理的な話し合いの土台を作りました。
結果・効果
数字に基づく客観的な資料を見ることで、兄弟間の話し合いが進展。最終的に全員が納得する分割案で合意に至り、一次・二次相続を通じた税負担を約600万円軽減する結果となりました。遺産分割協議書の作成までサポートし、申告期限内に無事完了しました。
ポイント解説
遺産分割が難航する原因の多くは、「何をどう分けるのが公平なのか」が見えていないことにあります。不動産の評価額・税額・二次相続への影響などを数字で可視化すると、感情的な対立が和らぎ、合理的な話し合いができるようになります。当事務所では複数パターンのシミュレーションを標準的に実施し、相続人全員に理解いただける資料を作成しています。

事例7:遠方の不動産を含む複雑な相続——現地調査で大幅節税
ご相談者の属性
40代女性(長女)。相続人は配偶者と子ども1名の計2名。被相続人は世田谷区在住の70代男性。遺産総額は約1億8,000万円。主な財産は世田谷区内の自宅のほか、神奈川県と千葉県にも土地を所有していました。
ご相談の背景・お悩み
亡くなったお父様が世田谷区内の自宅のほか、神奈川県と千葉県にも土地を所有されていました。不動産が複数の自治体にまたがっており、評価が複雑になることが予想されました。
他の税理士事務所に相談したところ、「遠方の土地は現地調査なしで机上評価する」と言われ、不安を感じてご相談に来られました。「すべての土地をきちんと評価してほしい」というご要望でした。
当事務所の対応・提案内容
世田谷区の自宅はもちろん、神奈川県・千葉県の土地もすべて現地調査を実施しました。各自治体の役所での道路・都市計画情報の調査も行いました。
その結果、神奈川の土地は不整形地であることに加え、高圧線が上空を通過していることが判明。高圧線下の土地は建築制限を受けるため、評価額の減額が認められます。これは現地に行かなければ発見できない要素でした。
千葉の土地は建築基準法上の道路に接していない「無道路地」であることが判明しました。無道路地は通路部分の価額を控除して評価するため、大幅な減額が可能です。机上評価では接道状況まで正確に判断することが難しく、現地調査によって初めて発見された減額要素です。
結果・効果
3つの土地すべてで評価額の減額に成功。当初の机上評価と比較して、土地の評価額は合計で約4,000万円減額。これにより相続税は約1,200万円の節税となりました。現地調査を行わなければ発見できなかった減額要素が多く、お客様からは「すべての土地を見に行ってもらえて本当によかった」との声をいただきました。
ポイント解説
遠方の不動産があるケースでは、「現地調査なしで机上評価する」という対応をとる税理士事務所もあります。しかし、高圧線の存在、無道路地の判定、不整形地の正確な形状把握など、現地に行かなければ発見できない減額要素は数多くあります。当事務所では、距離にかかわらずすべての土地について現地調査を実施する方針を徹底しています。

事例8:生前贈与の全容を解明し適正申告を実現
ご相談者の属性
50代男性(長男)。相続人は子ども3名。被相続人は80代の父。遺産総額は約1億5,000万円(生前贈与の加算分を含む)。主な財産は自宅の土地・建物、預貯金のほか、生前に複数回の贈与を行っていた形跡がありました。
ご相談の背景・お悩み
お父様が生前にお子様やお孫様に対して複数回の贈与を行っていました。相続時精算課税制度を利用した贈与もあれば、暦年贈与として行ったものもあり、贈与の全体像が把握できない状態でした。「父がどの制度を使って贈与していたのかよくわからない」「申告漏れがあったら追徴されるのでは」とご不安を抱えてのご相談でした。
当事務所の対応・提案内容
まず過去の贈与税申告書の控え、預貯金の移動履歴、贈与契約書などを収集し、贈与の全体像を時系列で整理しました。税務署に対して過去の贈与税申告の閲覧請求も行い、お客様の手元にない情報も補完しました。
その結果、相続時精算課税制度を利用した贈与が2件、暦年贈与が複数件あることが判明しました。相続時精算課税の贈与は全額が相続財産に加算されるため、漏れなく申告に反映する必要があります。暦年贈与についても、亡くなる前3年以内のものは相続財産に加算する必要があります。
贈与税と相続税の関係を整理し、加算対象となるもの・ならないものを明確に区分しました。書面添付には贈与の調査経緯と判断根拠を詳細に記載しました。
結果・効果
相続時精算課税の贈与分2,500万円を相続財産に加算し、暦年贈与のうち加算対象となる分も漏れなく申告。一方、加算対象外の贈与を誤って含めることなく、適正な申告を実現しました。書面添付に贈与の調査経緯を詳細に記載したことで、税務調査なく申告が完了。「自分たちだけでは絶対にできなかった」とのお言葉をいただきました。
ポイント解説
生前贈与がある場合の相続税申告は、贈与の全容解明が最も重要なステップです。相続時精算課税の贈与は全額が相続財産に加算されます。暦年贈与は相続開始前3年以内(令和6年以降の贈与は段階的に7年以内に延長)のものが加算対象です。加算すべきものを漏らすと過少申告になり、逆に加算不要なものまで含めると税金を多く払い過ぎることになります。過去の贈与を正確に把握することが、適正申告の基礎となります。

事例9:配偶者居住権を活用し、自宅に住み続けながら節税を実現
ご相談者の属性
60代女性(配偶者・後妻)。相続人は配偶者と前妻のお子様1名の計2名。被相続人は70代男性。遺産総額は約1億2,000万円。主な財産は自宅の土地・建物と預貯金です。
ご相談の背景・お悩み
被相続人には前妻との間にお子様が1人おり、後妻であるご相談者との間にお子様はいませんでした。ご相談者は「この自宅に住み続けたい」とのご希望でしたが、前妻のお子様からは「法定相続分どおりの遺産がほしい」との意向がありました。
自宅の所有権をご相談者が取得すると、預貯金の取り分が減り、今後の生活資金が不足する懸念がありました。一方、お子様が所有権を取得すると、ご相談者が自宅に住み続けられなくなるリスクがありました。
当事務所の対応・提案内容
配偶者居住権の活用をご提案しました。配偶者居住権とは、配偶者が自宅の所有権を取得しなくても、終身にわたり自宅に住み続ける権利を取得できる制度です(2020年4月施行)。
この制度を活用すると、自宅は「配偶者居住権(ご相談者が取得)」と「負担付き所有権(前妻のお子様が取得)」に分けることができます。配偶者居住権の評価額は、配偶者の年齢や建物の耐用年数から計算され、所有権よりも低くなります。その分、配偶者は預貯金を多く取得でき、生活資金を確保できます。
さらに、二次相続(ご相談者が亡くなった時)には配偶者居住権は消滅するため、相続財産には含まれません。これにより二次相続の課税価格が抑えられるという節税効果もあります。
配偶者居住権の評価額、負担付き所有権の評価額、預貯金の分配額をそれぞれ算出し、双方の法定相続分を満たす分割案を作成しました。
結果・効果
お母様は配偶者居住権と預貯金約2,000万円を取得し、自宅に住み続けながら十分な生活資金も確保できました。前妻のお子様は負担付き所有権と残りの預貯金を取得。二次相続まで含めたトータルの税負担は、配偶者居住権を活用しなかった場合と比較して約350万円の軽減となりました。双方が納得する円満な分割を実現できた事例です。
ポイント解説
配偶者居住権は、自宅の所有権を取得しなくても住み続ける権利を確保できる比較的新しい制度です。特に再婚のご家庭や、配偶者と子どもの間で財産の配分が難しいケースで力を発揮します。二次相続時に配偶者居住権が消滅することによる節税効果もあります。ただし、配偶者居住権には登記が必要であり、評価方法も複雑です。専門家のサポートのもとで活用することをおすすめします。

事例10:海外資産を含む相続——国外財産調書との整合性を確保
ご相談者の属性
50代男性(長男)。相続人は配偶者と子ども2名の計3名。被相続人は70代男性。遺産総額は約2億5,000万円。主な財産は国内の自宅・預貯金のほか、アメリカに不動産と預金口座を所有していました。海外資産は約5,000万円相当です。
ご相談の背景・お悩み
お父様は以前海外赴任の経験があり、アメリカに不動産と銀行口座を所有していました。生前に国外財産調書を提出していたことはわかっていましたが、「海外の財産はどう評価するのか」「為替はいつの時点のものを使うのか」「アメリカでも税金がかかるのか」と疑問だらけの状態でご相談に来られました。
当事務所の対応・提案内容
まず、国外財産調書の記載内容と実際の海外資産を照合しました。アメリカの不動産については、現地の不動産鑑定評価書を取得し、日本の相続税法に基づく評価方法で換算しました。為替レートは、相続開始日の対顧客直物電信買相場(TTB)を使用しています。
アメリカの銀行口座については、残高証明書を現地銀行から取り寄せ、同様に相続開始日のTTBレートで円換算しました。
さらに、日米間の二重課税を防ぐため、外国税額控除の適用を検討しました。アメリカで遺産税(Estate Tax)が課される可能性を確認し、課される場合の日本での控除方法をシミュレーションしました。
国外財産調書との整合性確認も行い、記載漏れや評価額の乖離がないことを確認しました。不整合があると、税務署から問い合わせを受けるリスクが高まります。
結果・効果
海外資産を含む全財産を適正に評価し、国外財産調書との整合性も確保した正確な申告を実現しました。書面添付に海外資産の評価方法と根拠を詳細に記載したことで、税務調査なく申告が完了。海外資産を含む相続は年々増加しており、専門的な知識が求められる分野です。
ポイント解説
海外資産を含む相続では、現地の評価書の取得、為替レートの適用、外国税額控除の検討、国外財産調書との整合性確認など、国内のみの相続にはない複数のステップが必要です。国外財産調書は5,000万円超の海外資産がある場合に提出義務があり、相続税申告の内容と整合しない場合は税務調査の端緒になりえます。海外勤務経験のある方、海外投資をされている方の相続は、専門家への早めのご相談をおすすめします。

事例11:賃貸アパートの相続——小規模宅地等の特例(貸付事業用)で評価減
ご相談者の属性
50代男性(長男)。相続人は配偶者と子ども2名の計3名。被相続人は世田谷区在住の80代男性。遺産総額は約1億5,000万円。主な財産は自宅の土地・建物と賃貸アパート1棟(土地・建物)、預貯金です。
ご相談の背景・お悩み
お父様は自宅のほか、賃貸アパート1棟を所有して不動産賃貸業を営んでいました。アパートは15年以上前から経営しており、安定した賃料収入がありました。長男がアパート経営を引き継ぐ予定でしたが、「賃貸物件の相続でも小規模宅地等の特例が使えるのか」「自宅とアパートの両方に特例を適用できるのか」がわからず、ご相談に来られました。
当事務所の対応・提案内容
賃貸アパートの土地は「貸家建付地」として評価しました。借地権割合60%、借家権割合30%、賃貸割合100%(満室経営)の場合、自用地としての評価額から18%が減額されます。
さらに、小規模宅地等の特例のうち「貸付事業用宅地等」の適用を検討しました。お父様は15年以上前から賃貸事業を営んでいたため、「3年以内に新たに貸付事業を開始した宅地」には該当せず、特例の適用が可能です。貸付事業用宅地等の特例は、200㎡までの部分について50%の減額が適用されます。
ここで重要なのが、自宅の土地(特定居住用宅地等:330㎡まで80%減額)と賃貸アパートの土地(貸付事業用宅地等:200㎡まで50%減額)を併用する場合の限度面積の調整です。両方を完全に適用すると限度面積を超えるため、どちらの特例をどの程度適用するかによって税額が変わります。当事務所では複数パターンのシミュレーションを行い、最も税額が小さくなる組み合わせを算出しました。
結果・効果
貸家建付地評価と小規模宅地等の特例の最適な組み合わせにより、相続税額を約400万円軽減しました。賃貸アパートを含む相続では、特例の適用順序によって税額が大きく変わるため、複数パターンのシミュレーションが欠かせません。
ポイント解説
居住用と貸付用の小規模宅地等の特例を併用する場合、限度面積の調整計算が必要です。一般的には居住用の80%減額を優先するほうが有利なケースが多いですが、土地の面積や評価額によっては貸付用を優先したほうがよい場合もあります。また、相続開始前3年以内に新たに始めた貸付事業については特例の適用が制限されるため、賃貸事業の開始時期も重要な確認ポイントです。

事例12:老人ホーム入居中の相続——小規模宅地等の特例の適用判断
ご相談者の属性
50代女性(長女)。相続人はお子様2名。被相続人は90代の母。遺産総額は約8,000万円。主な財産は自宅の土地・建物(土地評価額約5,000万円)と預貯金です。被相続人は相続開始の3年前から有料老人ホームに入居しており、自宅は空き家の状態でした。
ご相談の背景・お悩み
お母様が老人ホーム入居中に亡くなられました。自宅は3年間空き家のままでしたが、「老人ホームに入っていた場合でも、自宅の土地に小規模宅地等の特例が使えるのか」が最大の疑問でした。特例が使えるかどうかで数百万円の差が出るため、慎重に判断してほしいとのご要望でした。
当事務所の対応・提案内容
お母様の介護認定の状況、入居していた施設の種類、自宅の利用状況などを詳細に確認しました。その結果、お母様は要介護3の認定を受けており、入居先は有料老人ホーム(老人福祉法に規定する施設に該当)であること、入居後も自宅は賃貸に出さず空き家のままであったことが確認できました。
これらの要件を満たす場合、被相続人が老人ホームに入居していても、相続開始の直前まで居住用に供されていたとみなされ、小規模宅地等の特例の適用が可能です。
さらに、お子様のうち1人が「家なき子特例」の要件を満たすかどうかも検討しました。家なき子特例とは、被相続人に配偶者がおらず、同居の相続人もいない場合に、一定の要件を満たす別居の親族が自宅の土地について小規模宅地等の特例を適用できる制度です。
結果・効果
お子様の1人が家なき子特例の要件を満たしていたため、小規模宅地等の特例を適用し、自宅の土地評価額5,000万円を80%減額の1,000万円に圧縮。遺産総額が大幅に下がり、相続税額は当初の見込みより約700万円の減額となりました。
ポイント解説
老人ホーム入居中の相続では、特例の適用可否の判断が複雑になります。適用の要件として、被相続人が要介護認定を受けていること、入居先が一定の施設に該当すること、自宅を賃貸に出していないことなどが求められます。また、「家なき子特例」の適用には、相続人自身が持ち家を保有していないこと、被相続人に配偶者がいないことなど、さらに細かい要件があります。要件を丁寧に確認することで、適用が認められるケースは少なくありません。

事例13:相続税の申告後に遺産が見つかった——修正申告で適正に対応
ご相談者の属性
50代男性(長男)。相続人は配偶者と子ども2名の計3名。被相続人は80代男性。当初の遺産総額は約1億円で申告済み。申告後に上場株式約500万円分の未申告口座が発見されました。
ご相談の背景・お悩み
当事務所で相続税申告を完了した後、お客様から「父の遺品を整理していたら、知らなかった証券会社の口座が見つかった」とのご連絡がありました。証券口座には上場株式約500万円分が残っていました。
申告漏れの財産が見つかった場合、修正申告が必要になります。「税務署に指摘される前に自分から申告したほうがいいのか」「追徴税はどれくらいかかるのか」と不安を感じていらっしゃいました。
当事務所の対応・提案内容
税務署から指摘を受ける前に自主的に修正申告を行えば、過少申告加算税は原則として課されません(ただし延滞税は発生します)。一方、税務署から指摘を受けた後の修正申告では、追加の税額に対して10%(50万円超の部分は15%)の過少申告加算税が課されます。
この違いをお客様にご説明し、速やかに修正申告を行うことをおすすめしました。新たに見つかった株式の評価額を相続開始日の時価で算出し、修正申告書を作成しました。
結果・効果
税務署の指摘前に自主的に修正申告を行ったため、過少申告加算税は課されず、追加の相続税と延滞税のみの負担で済みました。
ポイント解説
申告後に遺産が見つかることは決して珍しくありません。特に証券会社の口座や、遠方の金融機関の預金など、ご家族が把握していなかった財産が後から発見されるケースは実務上よくあります。重要なのは、発見した時点で速やかに修正申告を行うことです。自主的な修正申告であれば過少申告加算税は課されないため、放置せずすぐに対応することで、追加の負担を最小限に抑えることができます。

事例14:広大な農地の相続——納税猶予制度を活用
ご相談者の属性
40代男性(長男)。相続人は配偶者と子ども2名の計3名。被相続人は世田谷区在住の80代男性。遺産総額は約3億5,000万円。主な財産は農地(生産緑地含む、合計約2,000㎡、評価額約3億円)とその他の財産です。
ご相談の背景・お悩み
世田谷区内で代々農業を営んでいたお父様が亡くなりました。遺産の大部分は農地で、面積は合計約2,000㎡。農地の評価額は約3億円、その他の財産を含めた遺産総額は約3億5,000万円でした。
長男が農業を引き継ぐ予定でしたが、農地の評価額が非常に高く、そのまま課税されると数千万円の相続税が発生し、農地を売却しなければ納税できない状況でした。「農業を続けたいのに、税金のために農地を手放さなければならないのか」と悩まれてのご相談でした。
当事務所の対応・提案内容
農地の相続には「農地の納税猶予制度」という特別な制度があります。農業を営んでいた被相続人から農地を相続した相続人が、引き続き農業を営む場合に、農地にかかる相続税の一部について納税が猶予される制度です。猶予された税額は、相続人が農業を継続している限り、最終的に免除されます。
この制度の適用には、被相続人が農業を営んでいたこと、相続人が農業を継続すること、農業委員会の証明を受けることなど、複数の要件を満たす必要があります。当事務所では、各要件の充足状況を確認し、農業委員会への手続きもサポートしました。
また、生産緑地については生産緑地法に基づく評価減も適用しました。生産緑地は建築制限を受けるため、宅地としての評価額から一定の減額が認められます。
結果・効果
農地の納税猶予制度を適用した結果、約2,500万円の相続税が猶予されました。長男が農業を続ける限り、この税額は最終的に免除されます。農地を売却することなく農業を継続できることになり、お客様に大変喜んでいただきました。
ポイント解説
都市部の農地相続は評価額が高額になりやすく、通常どおり課税されると農業の継続が困難になるケースがあります。農地の納税猶予制度は、このような状況を救済するための制度です。ただし、猶予を受けた後に農地を転用・譲渡した場合は、猶予された税額と利子税を納付しなければなりません。制度の適用には農業委員会の証明が必要であり、手続きも複雑なため、専門家への早めのご相談をおすすめします。

事例15:相続放棄を検討——債務超過の可能性がある相続への対応
ご相談者の属性
40代男性(長男、一人っ子)。相続人は子ども1名のみ。被相続人は60代男性(個人事業主)。財産の全容は不明で、事業に関連する借入金の存在が疑われていました。
ご相談の背景・お悩み
お父様が亡くなり、相続人は子ども1人。お父様は生前に事業を営んでおり、預貯金や自宅のほか、事業に関連する借入金が残っている可能性がありました。「プラスの財産とマイナスの財産(借金)のどちらが多いかわからない」「相続放棄したほうがいいのか判断がつかない」とのご相談でした。
相続放棄の期限は、相続の開始を知った日から3ヶ月以内です。この期限を過ぎると原則として放棄できなくなるため、迅速な財産調査が求められました。
当事務所の対応・提案内容
まず、プラスの財産(不動産、預貯金、有価証券、生命保険金など)とマイナスの財産(借入金、未払い税金、連帯保証債務など)を緊急に調査しました。金融機関への照会、信用情報機関への開示請求、法務局での登記確認などを並行して進めました。
調査の結果、事業に関連する借入金は約1,500万円でしたが、不動産や預貯金などのプラスの財産は合計約4,000万円あり、差し引きで約2,500万円のプラスであることが判明しました。債務超過ではないため、相続放棄ではなく通常の相続手続きを進めることをおすすめしました。
なお、お父様が個人事業主であったため、事業に関連する準確定申告(亡くなった年の所得税申告)も併せて行いました。相続税申告の期限は10ヶ月ですが、準確定申告の期限は4ヶ月と短いため、こちらを優先してスケジュールを組みました。
結果・効果
迅速な財産調査により、相続放棄の期限内に「放棄は不要」という判断ができました。その後、通常の相続税申告手続きを進め、借入金を債務控除として差し引いたうえで適正に申告。相続財産に含まれない生命保険金の非課税枠も活用し、税負担を抑えることができました。
ポイント解説
相続放棄の検討が必要なケースでは、3ヶ月という短い期限内に財産の全体像を把握することが最優先です。債務超過であれば放棄を選択し、プラスであれば通常の相続手続きに進むという判断を、期限内に行わなければなりません。また、個人事業主の相続では、準確定申告(4ヶ月以内)と相続税申告(10ヶ月以内)の2つの期限があり、スケジュール管理が重要です。相続の開始直後に財産の全体像を把握することが、その後のすべての判断の基礎となります。
相続税申告のご相談は、お気軽にどうぞ
上記の事例はほんの一部です。相続の状況はご家族ごとに異なります。「自分のケースはどうなるのだろう」「このくらいの遺産でも相談していいのだろうか」——そのような段階でも、お気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。
