
この記事の要点
開業前または休業中の会社の株式を取得した場合に、どのように株価を算定したらいいのか疑問ですよね。通常の事業活動を行っている一般の会社であれば、取引相場のない株式(非上場株式)は会社の規模などに応じて類似業種比準価額方式や純資産価額方式といった評価方式により評価します。
しかし開業前または休業中の会社は、現に事業活動を行っていません。事業活動を行っている一般の評価会社に適用する原則的な評価方式ではなく、特定の評価会社として株式を評価します。具体的には、開業前又は休業中の会社の株式の価額は、1株当たりの純資産価額(相続税評価額)によって評価します。
本記事では特定の評価会社のなかでも「開業前又は休業中の会社」を取り上げます。以下の流れでお伝えします。
開業前又は休業中の会社の判定 → 開業前又は休業中の会社に当たる場合の株式評価
では解説していきます。
| ⑤ 開業前又は休業中の会社の判定 |
|---|
| いずれかに当たる会社をいう
① 開業前の会社 ② 休業中の会社 |
「開業前又は休業中の会社」とはつぎのいずれかに当たる会社をいいます。
したがって地震による火災で建物が消失や経営者が急に亡くなった場合などによって一時的に休業しており、近く事業が再開される見込みの会社は、休業中の会社にはあたりません。長期に渡り休業している休眠会社などが休業中の会社に該当します。
開業前・休業中の会社は、6種類の特定の評価会社を⑥から順に判定していく途中で出てきます。判定の順序を一覧で整理しています。特定評価会社6つの判定ポイントと評価方法をマスターしよう!
国税庁 評価通達189(5) 特定の評価会社の株式
つぎに「開業前又は休業中の会社」の株式の評価方法を確認します。
ご相談のご案内
非上場株式(自社株)を含む相続税申告に対応しています類似業種比準・純資産・配当還元といった評価方式の選択から計算まで、非上場株式を含む相続税申告としてお受けしています。
| 開業前又は休業中の会社の株式評価 | ||
|---|---|---|
| 評価方法 | 選択 | |
| 同族株主等 | 純資産価額方式※1 =1株当たり純資産価額(相続税評価額) | ー |
| 同族株主等以外※2 | ||
※1 株式取得者とその同族関係者の有する株式の議決権割合が50%以下の場合の80/100の適用なし
※2 特例的評価方式の配当還元方式の適用なし
開業前又は休業中の会社の株式の価額は、1株当たりの純資産価額(相続税評価額)によって評価します。
国税庁 財基通189-5 開業前又は休業中の会社の株式の評価
開業前または休業中の会社はそもそも事業活動が行われていないため、配当をすることや利益がでることはありません。配当や利益を比準とする類似業種比準価額価額を適用することは合理的ではないため、純資産価額方式により株式を評価することとされています。
開業前又は休業中の会社は、株主グループの議決権割合が50%以下の場合でも、1株当りの純資産価額から20%減額できません。
同じ純資産価額方式でも、開業後3年未満の会社では議決権割合50%以下の20%減額を使えます。開業後3年未満の会社の判定基準と非上場株式の株価評価とは?
| 特定の評価会社の株式評価 | |||
|---|---|---|---|
| 分類 | 原則的評価方式 | 特例的評価方式 | |
| 原則 | 選択 | ||
| ①比準要素数1の会社 | 純資産価額方式(80%適用あり) | 類似×0.25+純資産×0.75 | 配当還元方式 |
| ②株式等保有特定会社 | 純資産価額方式(80%適用あり) | S1+S2方式 | |
| ③土地保有特定会社 | 純資産価額方式(80%適用あり) | ー | |
| ④開業後3年未満の会社 | 純資産価額方式(80%適用あり) | ||
| ⑤開業前・休業中の会社 | 純資産価額方式 | ー | ー |
| ⑥清算中の会社 | 清算分配金見込額 ×基準年利率に応じた複利現価 | ー | ー |
※⑥→①の順で特定の評価会社に該当するかを判定
いずれの会社にも当てはまらない場合、一般の評価会社として評価
開業前又は休業中の会社では、一般の評価会社であれば特例的評価方式を適用できるとされた会社への影響力の小さい株主であっても、特例的評価方式の配当還元方式により株式を評価できません。
配当還元方式を使えないという取り扱いは、清算中の会社にも共通します。清算中の会社は分配見込額を現在価値に割り戻して評価します。清算中の会社の株式評価方法は?分配見込み額の現在価値とは?
配当還元方式は、会社の事業活動の結果、株主に分配される配当をもとに、企業価値を求めて株価を評価する方法です。開業前の会社や相当長期にわたり休業している会社においては、株主に配当として会社の利益が分配されることは期待できません。
本来であれば特例的評価方式により評価できるとされた株主が取得した株式であっても、特例的評価方式の配当還元方式により評価できないとされます。
したがって開業前又は休業中の会社の株式の価額は、会社の規模、株主の議決権割合にかかわらず、すべて1株当たり純資産額(相続税評価額)で評価します。
具体的な数字により開業前又は休業中の会社の株式の評価方法を確認していきましょう。
開業前又は休業中の会社の株式の評価方法を確認していきましょう。
<前提条件>
長期にわたり休業中の会社のため、開業前又は休業中の会社に当たります。
開業前又は休業中の会社の株式の価額は、会社の規模、株主の議決権割合にかかわらず、すべて1株当たり純資産額(相続税評価額)で評価します。
① 相続税評価額による純資産価額 :20,000千円
② 帳簿価額による純資産価額:10,000千円
③ 法人税等相当額 (①ー②)✕37%=3,700千円
④ 1株当たり純資産価額 (①ー③)/10,000株=1,630円
| 【純資産価額方式】 | |
|---|---|
| 資産の相続税評価額 | 負債の相続税評価額 |
| 「含み益×37%」を控除 | |
| 純資産価額 | |
| ↓ ÷ 株式数 | |
| 一株当たり純資産価額 | |
相続税評価額による純資産価額から「含み益✕37%」の金額を控除して評価会社の純資産価額を計算します。含み益は相続税評価額ベースの純資産価額と帳簿価額ベースの純資産価額との差額です。
純資産価額方式は、会社を清算したときにいくらの価値があるのか算定し株価を評価する方法です。含み益のある会社を売った場合、含み益に対して法人税等が課税されます。その分、清算された後の手取りの収入が減ります。そのため純資産価額から法人税相当額を控除した上で、1株当たり純資産価額を計算します。
なお開業前又は休業中の会社は1株当りの純資産価額から20%減額評価はできません。そのため株式を取得した株主グループの議決権割合が40%であり50%以下ですが、1株当たりの純資産価額に80/100の割合を乗じていません。
純資産価額方式には、法人税等相当額37%の控除など計算のルールがあります。科目ごとの留意点まで確認できます。非上場株式の純資産価額方式を科目別に徹底解説!
本記事について
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