市街地山林の相続税評価が分からない?基礎から学べる解説記事

宅地化の進んでいる地域にある市街地山林は、近隣の宅地の影響を強く受けます。そのため市街地山林は、その山林が宅地であるとした場合を前提に評価することとされています。

本記事では、山林のなかでも市街地山林をピックアップして、市街地山林の相続税評価額をお伝えします。

目次

市街地山林とは

市街地山林とは、宅地のうちに介在する山林、市街化区域にある山林などをいい、市街地農地、市街地周辺農地などと同様に宅地並みの水準で取引される土地をいいます。

評価対象地が市街地農地に当たるかどうかは、国税庁の公開する「評価倍率表」で確認できます。

市街地山林とはの表

評価倍率表の山林欄に、「比準」または「市比準」の記載があれば、評価対象地が市街地山林であることがわかります。なお「純」とあれば純山林、「中」とあれば中間山林と判定できます。

たとえば下表の東京都の評価倍率表は、こちら(令和4年分 財産評価基準書 東京都 (評価倍率表)|国税庁)から確認できます。

市街地山林の相続税評価が分からない?基礎から学べる解説記事のフローチャート(1)

市街地山林の評価単位

市街地山林の評価単位の図(1)

山林は、原則、上図のように1筆の山林ごとに評価します。山林の上に存する権利も同様です。1筆の山林ごとに評価する山林は、原則、純山林と中間山林です。

市街地山林の評価単位の図(2)

ただし市街地山林は、筆ごとではなく、上図のように利用の単位となっている一団の山林を評価単位とします。宅地と同じように評価単位を判定します。

市街地山林の評価

区分 評価方法
純山林 倍率方式
中間山林 倍率方式
市街地山
①宅地比準方式

(宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額 - 宅地転用に必要な1㎡当たりの造成費)× 地積
宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額
・路線価地域:路線価 × 画地調整率
・倍率地域:近傍宅地の固定資産税額評価額 × 宅地の評価倍率 × 画地調整率
②倍率方式
なお宅地への転用が見込めないと認められる場合、近隣の純山林の価額に比準して評価

市街地山林は、宅地比準方式または倍率方式により評価します。

①宅地比準方式

市街地山林の評価額

( 山林が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額 - 宅地転用に必要な1㎡当たりの造成費 )× 地積

宅地比準方式は、市街地山林の付近にある宅地の価額を基礎として、その宅地との位置、計上等の条件差を考慮し、「市街地山林が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額」を求めます。その価額からその「市街地山林を宅地に転用する場合に通常必要とされる1㎡当たりの造成費」を控除した価額に地積を乗じて市街地山林の価額を求める方法です。

山林が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額

山林が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額
路線価地域路線価 × 画地調整率(位置・形状等の条件差)
倍率地域近傍宅地の固定資産税額評価額 × 宅地の評価倍率 × 画地調整率(位置・形状等の条件差)

「山林が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額」は、市街地農地が路線価地域にあるか倍率地域にあるかにより計算方法が異なります。

路線価地域

市街地山林の相続税評価が分からない?基礎から学べる解説記事の計算例(2)

市街地山林が路線価地域(上表のように評価倍率表の宅地の欄に「路線」とある地域)にある場合、路線価に画地調整率(位置・形状等の条件差)を乗じて計算します。

「山林が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額」は、通常の宅地と同じように評価するため、路線価によります。山林と付近の宅地との位置・形状の条件差は、路線価地域にある市街地山林の場合、評価する山林が所在する地区に定められている画地調整率を参考にしてよいとされています。

市街地農地等を宅地比準方式で評価する場合の形状による条件差|国税庁

倍率地域

市街地山林の相続税評価が分からない?基礎から学べる解説記事の路線価図(3)

市街地農地が倍率地域(上表のように評価倍率表の宅地の欄に「1.1」などの倍数が記載されている地域)にあっても評価倍率表の農地に「比準」と記載されている場合、宅地比準方式により評価します。

「山林が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額」は、倍率地域では評価しようとする山林に最も近接し、かつ、用途、道路からの距離や形状等が最も類似する宅地の評価額(固定資産税評価額×倍率)をもととして画地調整を計算します。

山林と付近の宅地との位置・形状の条件差は、倍率地域にある市街地山林を宅地比準方式により評価する場合、普通住宅地区の普通住宅地区の画地調整率を参考にできるとされています。

1㎡当たりの宅地造成費の金額

1㎡当たりの造成費の金額は、その山林を宅地に転用する場合に通常必要と認められる整備費、伐採・抜根費、地盤改良費などの合計額をいいます。1㎡当たりの造成費の金額は、毎年、各地域の国税庁から発表される「宅地造成費の金額表」を用いて計算します。たとえば令和4年の東京都の場合、国税庁ホームページのこちら(令和4年分 財産評価基準書 東京都 財産評価基準書目次|国税庁)から確認できます。

1㎡当たりの宅地造成費の金額の図解

平坦地・傾斜地ごとに、以下のとおり定めています。

平坦地の宅地造成費

市街地山林の相続税評価が分からない?基礎から学べる解説記事の図解(4)
  • 「整地費」・・・①凹凸がある土地の地面を地ならしするための工事費、または②土盛工事を要する土地について、土盛工事をした後の地面を地ならしするための工事費
  • 「伐採・抜根費」・・・樹木が生育している土地について、樹木を伐採し、根等を除去するための工事費。整地工事によって樹木を除去できる場合、造成費に本工事費を含めません。
  • 「地盤改良費」・・・湿田など軟弱な表土で覆われた土地の宅地造成に当たり、地盤を安定させるための工事費
  • 「土盛費」・・・道路よりも低い位置にある土地について、宅地として利用できる高さ(原則、道路面)まで搬入した土砂で埋め立て、地上げする場合の工事費
  • 「土止費」・・・道路よりも低い位置にある土地について、宅地として利用できる高さ(原則、道路面)まで地上げする場合、土盛りした土砂の流出や崩壊を防止するために構築する擁壁工事費

傾斜地の宅地造成費

市街地山林の相続税評価が分からない?基礎から学べる解説記事の計算例(5)

傾斜地の宅地造成費には、整地費、土盛費、土止費のすべての費用が含まれています。伐採・抜根費は含まれていません。伐採・抜根が必要な土地は、「表1 平坦地の宅地造成費」の「伐採・抜根費」の金額を用いて計算します。

②倍率方式

市街地山林が倍率地域にあり、評価倍率表の山林の欄に倍率が定められている場合、山林の固定資産税評価額に倍率を乗じて評価します。

市街地山林の評価方法の具体例

市街地山林の評価方法の具体例をお伝えします。

路線価地域の市街地山林の評価

路線価地域の市街地山林の評価の路線価図(1)

路線価地域にある市街地農地の評価方法です。

住宅地図で該当地がわからない場合は、自治体の役所で山林の位置を確認します。

路線価地域の市街地山林の評価の路線価図(2)

評価倍率表の宅地の欄に「路線」とありますので、山林は路線価地域にあることがわかります。

①宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額

山林が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額
路線価地域路線価 × 画地調整率(位置・形状等の条件差)
倍率地域近傍宅地の固定資産税額評価額 × 宅地の評価倍率 × 画地調整率(位置・形状等の条件差)

路線価100,000円 × 奥行価格補正率0.95 = 95,000円

路線価地域にある山林は、宅地比準方式により評価します。評価対象地は路線価地域にあるため、「宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額」は、路線価をもとに計算します。路線価地域の普通住宅地区に所在する市街地農地は、普通住宅地区の地区区分にもとづく画地調整率を用いて計算します。

②1㎡当たりの宅地造成費

市街地山林の相続税評価が分からない?基礎から学べる解説記事の計算例(6)

山林の傾斜を測定したところ11度でした。また宅地造成するとした場合、敷地全体に伐採・伐根が必要なことがわかりました。

1㎡当たり宅地造成費は、以下のとおりです。ここでは令和4年分の東京国税局のものを用います。

  • ①傾斜度に係る造成費:面積600㎡ × @35,800円(傾斜度 11度) = 21,480,000円
  • ②伐採・抜根費:伐採・抜根を要する面積600㎡ × @1,000円 = 600,000円
  • 計 22,080,000円
  • 1㎡当たり宅地造成費 36,800円
市街地山林の相続税評価が分からない?基礎から学べる解説記事の図解(7)
市街地山林の相続税評価が分からない?基礎から学べる解説記事の図解(8)

③評価額

(宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額95,000円 - 1㎡当たり宅地造成費 36,800円 )× 総地積600㎡ = 34,920,000円

市街地農地等の評価明細書

市街地山林の相続税評価が分からない?基礎から学べる解説記事の図解(9)
市街地山林の相続税評価が分からない?基礎から学べる解説記事の図解(10)

倍率地域にある市街地山林の評価

倍率地域にある市街地山林の評価の図解(1)

倍率地域にある市街地山林の評価方法を見ていきます。

倍率地域にある市街地山林の評価の計算例(2)

評価倍率表の宅地の欄に「路線」ではなく「1.1」とあるため、倍率地域にある山林であることがわかります。倍率表の山林の欄に「比準」と記載されていますので、市街地山林の価額は宅地比準方式により計算します。

①宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額

「宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額」は、市街地山林が路線価地域にあるか、倍率地域にあるかによって求め方が異なります。

山林が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額
路線価地域路線価 × 画地調整率(位置・形状等の条件差)
倍率地域近傍宅地の固定資産税額評価額 × 宅地の評価倍率 × 画地調整率(位置・形状等の条件差)

倍率地域にある場合、山林が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額は、近傍宅地の固定資産税額評価額に宅地の評価倍率と画地調整率(位置・形状等の条件差)を乗じて計算します。

倍率地域では、宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額は、固定資産税評価額に宅地としての倍率を乗じて、さらに画地調整率(位置・形状等の条件差)を乗じて計算します。

市街地山林の相続税評価が分からない?基礎から学べる解説記事の計算例(11)

固定資産税評価額は、基準年度の固定資産税路線価によります。固定資産税評価額は、自治体の固定資産税課に問い合わせするほか、全国地価マップ(全国地価マップ|トップ)でも確認できます。

全国地価マップで公開されている固定資産税路線価は、基準年分の路線価です。固定資産税評価額は原則、3年に1度改正されます。基準年度以外の年は、原則、新たな評価は行わず据え置きとなります。しかし土地の地価の下落が認められた場合、価額が修正されます。

全国地価マップ上の路線価または標準値をクリックすると基準年度から評価年度までの間に地価が下落している場合の時点修正率が表示されます。全国地価マップにより固定資産税評価額を求めるときは、時点修正が必要かどうかを検討する必要があります。本事例では評価額の計算上、時点修正は省略しています。

市街地農地等の評価明細書の書き方

評価明細書は以下のとおりです。

市街地山林の相続税評価が分からない?基礎から学べる解説記事の図解(12)

留意点

市街地山林にかかわる留意点です。

宅地への転用が見込めない市街地山林

宅地への転用が見込めない市街地山林の判定フロー
物理的な観点経済合理性の観点結果
急傾斜地であるため宅地造成が不可能

→「宅地への転用が見込めないと認められる場合」に該当

純山林評価
宅地比準方式または倍率方式によって評価した価額が、近隣の純山林の価額に比準して評価した価額を下回る

→「宅地への転用が見込めないと認められる場合」に該当

純山林評価
純山林評価該当しない場合は
宅地比準方式で評価

市街地山林について宅地への転用が見込めないと認められる場合、宅地比準方式に代えて、評価対象地に近い純山林の価額に比準して評価します。

その「宅地への転用が見込めないと認められる場合」とは、たとえば①宅地化するのに多額の造成費が見込まれるもの(経済合理性)と、②その山林が急傾斜地のため宅地造成が不可能と認められるもの(物理的)が考えられます。

市街地山林の相続税評価が分からない?基礎から学べる解説記事の図解(13)

①宅地比準方式または倍率方式によって評価した価額が、近隣の純山林の価額に比準して評価した価額を下回る場合、経済合理性の観点から宅地化するための造成は難しいため、山林は、評価対象地から距離的に最も近い位置にある純山林の価額に比準して評価します。

市街地山林の相続税評価が分からない?基礎から学べる解説記事の図(14)

たとえば上図の場合、

宅地比準方式

(路線価10,000円 × 画地調整1.0 − 宅地造成費12,000円)× 500㎡ = △1,000,000円(マイナス)

上記のように宅地比準方式に計算すると、造成費の金額が大きいため、市街地山林の評価額はマイナスとなり、純山林価額を下回ります。

純山林の評価額

近傍純山林単価20円 × 地積500㎡ = 10,000円

したがって純山林評価により計算します。近傍純山林の単価は、税務署で確認します。

②その山林が急傾斜地のため宅地造成が不可能と認められるものの判定にあたって、明文で規定されたものはありません。急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律が「急傾斜地」の定義を「傾斜度が30度以上である土地」としていることから、急傾斜地の目安に傾斜度30度以上とすることも一つの考えです。

傾斜度が30度未満のがけ地であれば、一律に宅地比準方式を適用することが相当と判断されるわけではありません。傾斜度が30度未満でも宅地化困難と判断される場合も考えられるため個別の判断となります。

なおこの基準は、市街地(周辺)農地、市街地原野にも準用されます。宅地への転用が見込めない市街地山林の評価方式に準じて、その価額は、純農地、純原野の価額により評価します。

地積規模の大きな宅地の評価

適用できる適用できない
宅地
宅地比準方式で評価する土地
├ 市街地農地
├ 市街地周辺農地
├ 市街地山林
├ 市街地原野
└ 雑種地
純農地
中間農地
純原野
中間原野
純山林
中間山林
※ 市街地山林、市街地農地、市街地原野で宅地化として分割分譲が想定できず、純山林、準農地、純原野として評価するものは適用不可

市街地山林が、地積規模の大きな宅地の評価の適用対象となる場合、規模格差補正を適用できます。ただし以下のような理由により、戸建住宅用地としての分割分譲が想定されない場合、「地積規模の大きな宅地の評価」の適用対象にはなりません。

  • 多額の造成費用が必要であり経済的合理性から宅地への転用が見込めない
  • 急傾斜地などで宅地への造成が不可能であり、物理的に宅地への転用が見込めない
  • 法律、条例などで造成が制限されている

地積規模の大きな宅地の評価-市街地農地等|国税庁

まずはお気軽にご相談ください

相続税のお悩み、まずは無料相談で解決の糸口を見つけましょう

初回無料相談 秘密厳守 土曜日対応
📞
受付 9:00〜18:00(平日/土)
お役に立てば、シェアしていただけるとうれしいです
  • URLをコピーしました!
目次