
この記事の要点
土地区画整理事業の施行地区にある宅地は、相続が起きた時点で事業がどこまで進んでいたかによって、評価する土地も評価額も変わります。
決め手は4つの問いです。換地処分は済んでいるか。仮換地は指定されているか。仮換地を使い始められるか。造成工事の完了まで1年を超えるか。この順に当てはめれば、従前地・仮換地・換地のどれを、いくらで評価するかが決まります。
この記事では、先に判定のフローチャートを示し、場合ごとの評価を設例の数字で確かめます。路線価図に「個別評価」と書かれた地域で出す個別評価申出書の手続きは、最後にまとめました。
土地区画整理事業は、道路や公園などの公共施設を整え、宅地を使いやすくするために、土地の区画や形を整え直す事業です。都市計画区域内の土地が対象で、都道府県、市区町村、土地区画整理組合などが土地区画整理法にもとづいて行います。
同じ都市計画にもとづく制限でも、都市計画道路予定地は別の補正率で評価します。相続税で損しないために!都市計画道路予定地の評価を理解しよう
事業の前と後のイメージは、下の図のとおりです。


(参照元:世田谷区 土地区画整理事業)
評価に出てくる土地は3つあります。もとの土地が従前地、事業のあいだ仮に割り当てられるのが仮換地、事業のあとに入れ替わるのが換地です。
| 従前地 | (じゅうぜんち)区画整理の前の、もとの土地。換地と入れ替わる前の土地です。 |
|---|---|
| 仮換地 | (かりかんち)換地処分が済むまでのあいだ、従前地の代わりに仮に割り当てられる土地です。 |
| 換地 | (かんち)換地処分によって従前地と入れ替わる、区画整理後の土地です。 |
| 仮換地の指定 | 指定の効力が生じると、従前地を使っていた人は仮換地を同じように使えるようになり、従前地は使えなくなります。換地処分は、原則として事業の工事がすべて終わってから行われます。 |
事業はおおむね次の順に進みます。細かな手順は施行者によって違いますが、評価に使う価額は3つの時期で分かれます。
| 時期 | 事業の主な手続き | 評価に使う価額 |
|---|---|---|
| ①仮換地の指定前 | 住民とのまちづくり案の検討 都市計画決定 施行規程・定款、事業計画の決定 土地区画整理審議会・総会の設置 |
従前地の価額 (従前の公図で評価) |
| ②仮換地の指定後 | 仮換地の指定※1 建物の移転補償、工事 |
原則、仮換地の価額 (仮換地図で評価) |
| ③換地処分後 | 換地処分※2 土地・建物の登記 清算金の徴収・交付 事業の完了 |
換地の価額 (換地図で評価) |
※1 仮換地の指定:将来、換地とされる土地の位置と範囲を指定すること
※2 換地処分:従前の宅地の上の権利が換地に移り、清算金が確定すること
時系列に並べると、下の図のようになります。帯に書いてあるのが、その時期に評価する価額です。使用収益開始日が別に定められると、従前地の価額で評価する期間が②のように延びます。

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土地の相続税評価は、確認の深さで差が出ます道路・形状・利用状況などの個別事情は、資料と現地の確認を重ねるほど評価に反映できます。当事務所は、こうした個別事情の検討を大切にして相続税申告をお受けしています。
どの土地をいくらで評価するかは、次の4つの問いに上から順に答えると決まります。右へ進むと評価する価額、下へ進むと次の問いです。
※換地処分による清算金の授受が課税時期に確実と見込まれる場合は、評価に反映します。
Q2からQ4は、財産評価基本通達24-2の定めです。「原則は仮換地の価額」という本文に、95%評価のただし書と、従前の宅地に戻る(注)が付いています。
(参照元:財産評価基本通達24-2 土地区画整理事業施行中の宅地の評価)
フローチャートの順に、場合ごとの評価を見ていきます。数字は次の設例で確かめます。

上の図は、従前地と仮換地を重ねたものです。従前地の地番が「1-4」、仮換地の番号が「4」です。
仮換地の奥行は、260㎡を間口13mで割って20mです。普通住宅地区で奥行20mなら、奥行価格補正率は1.00です。
従前地と仮換地の自用地評価額は、次のとおりです。
従前地(300㎡)の自用地評価額
50,000円 × 300㎡ = 15,000,000円
仮換地(260㎡)の自用地評価額
路線価80,000円 × 奥行価格補正率1.00 × 260㎡ = 20,800,000円
同じ土地でも、事業の段階によって、この2つのどちらか、または仮換地の95%で評価することになります。
換地処分の公告があった日の翌日から、従前地の所有権や賃借権などの権利は換地に移ります。それ以後は換地の価額で評価します。区画整理が終わった土地として、路線価方式か倍率方式で評価します。
仮換地が指定されていない土地は、従前の宅地の価額で評価します。区画整理の施行地区にあることは考慮しません。設例なら15,000,000円です。
理由は通達の書き方にあります。財産評価基本通達24-2が定めているのは、「仮換地が指定されている場合におけるその宅地の価額」だけです。指定の前はこの規定の外にあり、従前の宅地を路線価方式か倍率方式でそのまま評価します。区画整理の計画が公表されていても、仮換地の指定がなければ評価は変わりません。
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仮換地が指定されていても、次の2つのいずれにも当てはまるときは、従前の宅地の価額で評価します。
ふつうは仮換地の指定の効力発生日から仮換地を使えます。ただし施行者は、仮換地に使用収益の障害となる物件があるなどの事情があるとき、仮換地を使い始められる日(使用収益開始日)を別に定められます。最初の節の図の②が、この場合です。
枠で囲った期間は、仮換地が指定されているのに従前の宅地の価額で評価する区間です。
2つとも当てはまるときは、仮換地をまだ使えず、造成も始まっていません。その段階で仮換地の価額により課税するのは実態に合わないため、従前の宅地の価額で評価します。どちらか一方だけなら、この扱いにはなりません。通達24-2の(注)が「次の事項のいずれにも該当するとき」と定めているためです。
設例に当てはめると、評価するのは仮換地(20,800,000円)ではなく従前地(15,000,000円)です。
仮換地で評価した場合との差は5,800,000円です。使用収益開始日がいつと定められているかを確かめずに仮換地で評価すると、評価額がこの差額の分だけ過大になります。
仮換地の造成工事が施行中で、課税時期から工事完了までが1年を超えると見込まれるときは、工事が完了したものとして評価した価額の95%で評価します。
仮換地を使う権利を得ていても、工事が続くあいだは自由に使えません。その期間が1年を超える見込みなら、5%を差し引くという扱いです。
設例の仮換地(番号4)なら、次のように評価します。
① 造成工事が完了したものとした評価額(=通常の自用地評価額)
路線価80,000円 × 奥行価格補正率1.00 × 260㎡ = 20,800,000円
② ① × 95% = 19,760,000円
5%を差し引く起点は、工事中の現況ではなく工事が完了したものとした価額です。通達24-2のただし書が「その仮換地について造成工事が完了したものとして、本文の定めにより評価した価額の100分の95」と定めているためです。工事の進み具合に応じて評価額を下げる規定ではありません。
なお区画整理事業全体の工事が完了まで1年超の見込みでも、評価対象地の工事が完了している場合、95%で評価するのではなく、100%で評価することが妥当です。
仮換地が指定されていて、ここまでのどれにも当たらなければ、原則どおり仮換地の価額で評価します。指定を受けた人は、仮換地を従前の宅地と同じように使えるからです。
仮換地の価額は、路線価方式か倍率方式で計算します。設例では、仮換地が面する道路の路線価に画地調整を当てた20,800,000円です。従前地のほうが40㎡広くても、評価するのは仮換地です。
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事業の最終段階では、従前地と換地の価値の差を清算金で調整します。課税時期に、交付を受ける清算金や徴収される清算金が確実と見込まれるときは、その額を評価に反映します。
| 清算金が交付される場合 | 仮換地の価額 + 交付される清算金の額 |
|---|---|
| 清算金が徴収される場合 | 仮換地の価額 - 徴収される清算金の額 |
交付される清算金は仮換地の価額に加え、徴収される清算金は差し引きます。清算金の額は換地処分の公告で確定します。
この加算と減算は、通達24-2の本文には書かれていません。根拠は国税庁の質疑応答事例で、「換地処分により徴収又は交付されることとなる清算金のうち、課税時期において確実と見込まれるものがあるときには、その金額を評価上考慮して、徴収されるものは仮換地の価額から減算し、交付されるものは加算して評価します」としています。通達だけを読んでいると見落とす論点です。
換地処分の公告が近い時期に相続が起きたときは、清算金の見込みで評価額が動きます。施行者に交付・徴収の見込額を確かめてから、評価額を固めます。
フローチャートに答えるには、相続が起きた日の時点の事実が要ります。確かめるのは次の5つです。
| 確かめること | 何に使うか |
|---|---|
| 仮換地の指定の有無と指定日 | 従前地で評価するか、仮換地で評価するかの分かれ目(Q2) |
| 使用収益の開始日 | 指定日と別に定められていれば、従前地で評価する場合がある(Q3) |
| 造成工事の進み具合と完了時期 | 工事前かどうか(Q3)、完了まで1年を超えるか(Q4) |
| 清算金の有無と見込額 | 確実と見込まれる額を仮換地の価額に加減算する |
| 従前地と仮換地の位置関係 | 評価する土地の間口・奥行・形を測る |
どの土地が仮換地なのかは、施行者から届く仮換地指定通知で確かめます。まず相続人の手元の書類を見て、足りない分を施行者(土地区画整理組合や市区町村など)に問い合わせます。換地処分の公告が済んでいるかどうかも、施行者に確かめます。
工事は日々進みます。確かめるのは調べた日の状況ではなく、相続が起きた日の状況です。
路線価図や評価倍率表には、路線価や倍率の代わりに「個別評価」「個別」と書かれた地域があります。土地区画整理事業や市街地再開発事業の施行地区など、区画が変わりつつある地域です。


(参照元:財産評価基準書|国税庁)
この表示があれば、個別評価申出書を税務署に出します。従前地か仮換地が面する道路に路線価を付けてもらい、その回答をもとに評価します。
回答で路線価が示されれば、そこから先は通常の路線価方式と同じです。設例の仮換地のように、奥行価格補正率などの画地調整を当てて評価します。

上の図は東京国税局の記載例です。現在の申出書の様式とは、記入欄の並びが一部違います。最新の様式は、下の出典のページから入手できます。
本記事について
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